こわいけど、なんだか懐かしい
記録に残さなければ消えてしまう、そう思っていた
昔はいろんなお祭りや縁日で見かけた「見世物小屋」。へび女、人間ポンプ、タコ娘、ロクロ首、オートバイサーカス…。最盛期には数百軒を数えたという見世物小屋、その最後の一軒と言われる大寅興行社。普段は垣間見ることができない見世物小屋一座の旅から旅への生活と歴史。『ソレイユのこどもたち』で山形国際ドキュメンタリー映画祭2011 アジア千波万波部門・特別賞を受賞した映画監督・奥谷洋一郎は、お化け屋敷のアルバイトをきっかけに、見世物小屋一座と出会い、共に旅するようになっていく。北海道から九州、日本を縦断するなかで見つめる、一座の暮らしと人情、そして10年にわたる交流から滲み出る、一瞬の人生の輝きをみつめる。
最後の見世物小屋一座と言われる、大寅興行社。日本全国、旅から旅に回っている。目的地に着けば材木をトラックから下ろし、一座全員で仮設の小屋の設営にかかる。犬や猿やヘビも一座の一員のようだ。見世物小屋の名物とも言える看板がかかり、夜になると興行が始まる。小屋に明かりが灯り、客寄せの口上が場を盛り上げる。太夫と呼ばれる出演者たちの出番だ。怖いもの見たさのお客が小屋に吸い込まれていく。
大寅興行社の歴史を物語る、モノクロの写真の数々や仮設小屋の模型。かつて見世物小屋を営んでいた人たちも訪ねてくる。昔話に花が咲く。
かつて日本中どこでも見られた見世物小屋の風景が、いま消え去ろうとしている。
また今日も、小屋をたたんで、荷物をトラックに載せて次の旅に出かける。見世物小屋がそこにあったという人々の記憶とともに。